ボードゲーム & カードゲーム の 開発

HUNTER×HUNTER『軍議』で考える”必勝法”の話

皆さん、漫画好きですか? そんなに好きでもないって人でも、このタイトルは知ってるかも知れません。

『HUNTER×HUNTER』 現在、週刊少年ジャンプで絶賛連載中……連載?……休載中の人気漫画です。

『HUNTER×HUNTER』の作中、とあるエピソードで物語の重要なキーアイテムとして『軍議』という将棋やチェスのようなボードゲームが登場します。そして、その軍議が実際に販売される! と、話題になりました。 公式サイト https://store.universal-music.co.jp/s/hunter-gungi/

予約締切の6月19日が迫る中、上級ルールについての解説記事も公開されています。 上級ルール解説 https://www.universal-music.co.jp/cinema/hunter-gungi/

今回のブログは、軍議のご紹介……ではなく、一時期話題になった「必勝法」について個人的に思うことを書いてみます。

このゲームには必勝法がある?

軍議のルールの一部が公開された直後に「先手必勝ではないか」と話題になりました。 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/18/news111.html

すごく大雑把に言うと「先手、後手の順にコマを1つずつ置いて初期配置するルールだから、先手がすぐに配置終了を宣言したら後手が圧倒的に不利になるのでは?」という話です。

気を付けてもらいたい点は、この段階ではルールの一部しか公開されていなかったことです。そして、上級ルール解説の記事に書かれていますが「先手が配置終了しても後手は配置を続けられる」というルールが後に公開されました。

なので、この必勝法は実際には行えないようです。

さて、ここからが本題なのですが「必勝法があっても良いじゃん!」って思いません?

思いませんよね。ダメそうですよね。始めた瞬間に勝ち負けが分かり切ってたらダメでしょ。必勝法 is 悪。必勝法 is 完成度が低い証拠。

……そこまで思ってないかも知れませんが、ここから「必勝法 is 悪? そうでもないんじゃないかな」というお話をさせてもらいます。

必勝法は悪なのか?

必勝法があるゲームと聞くと「これやっておけば勝てるんでしょ? 退屈じゃない?」と思うかも知れません。

実際ほとんどそうなんですが、例外があります。必勝法が丸暗記できないくらい複雑な場合です。

例えば『どうぶつしょうぎ』は、解析により78手で後手が必ず勝つゲームなのが分かっています。最善の手を打ち続けて、後手なら必ず勝てるどうぶつしょうぎの神様みたいなソフトもあるそうです。

この必勝法を丸暗記できたら誰でもチャンピオンになれます。でも、人間にはそこまでできないので必勝法の存在が問題にならない訳です。

必勝法が生まれてしまうゲーム

解析、という小難しい話になってきましたが、さらに小難しい話で「二人零和有限確定完全情報ゲーム」というジャンルがあります。砕いて言うと「二人対戦で、運の要素がなくて、お互いのコマや手札が完全に公開されていて、いつかは終わるゲーム」のことです。

よく、将棋や囲碁やチェスが例に挙げられます(ただし、囲碁やチェスは無限に続けられる状況があったり、将棋も千日手が絡んだ状態などでは厳密な定義から外れるようです)。

で、この「二人対戦で、運の要素がなくて、お互いのコマや手札が完全に公開されていて、いつかは終わるゲーム」は、お互いが最善の手を打ち続けると「先手必勝」か「後手必勝」か「必ず引き分けになる」かのどれかになる性質があります。

言ってしまえば、必勝法が必ず生まれてしまう、必勝法から逃げられないゲームジャンルな訳です。将棋も囲碁もチェスも、解析が進めばいつか「必勝法」が見つかってしまうかも知れません。ただ、まー、見つかってもに人間には再現不可能な気がします……

そんな訳で、これらのゲームも「必勝法見つかったからもうやる意味ないじゃん」とはならないでしょう。

『軍議』の必勝法の話

さて、話を軍議に戻しますと、ルールの一部が公開されてすぐに必勝法が話題になったものの、後に追加公開されたルールによってその必勝法は実際にはできないと分かった、というお話でした。

軍議の発売はまだ数か月先のようですが、ルールの全てが明らかになった後、解析が進めばおそらく改めて必勝法が見つかるでしょう。それは何十年後の未来の話かも知れないんですけどね。

では、もし必勝法が見つかったら軍議というゲームはダメなゲームということになってしまうのか?

ここまで読んでいただけた皆さんには私が言いたいことは察しが付くと思いますが、重要なのは「必勝法が人間に再現できるかどうか」だと思います。

本当に大切なポイントは「必勝法があるか」ではなく「簡単に勝ち負けが決まって、やることがなくなるか」ではないでしょうか。これって、実際にやり込んでみないと分からないことだと思うんです。要するに、遊んでいて楽しければ良ゲーだし、遊んでみないと分からないってことだと思います。

そして、もう一つ思うことは「”二人零和有限確定完全情報遊戯”に”アブストラクトゲーム”ってルビ振ると念能力っぽいな」ということです。たぶん特質系で、ルールを押し付けてきます。今日のブログは小難しい話でよく分からなかったという方は、こちらだけでも覚えておいてもらえれば嬉しいです。